花盗人に罪は無し
きりりとした風が吹くある晩の事。ジッリョネロファミリー本部はざわついていた。 玄関側と、その反対側から三体ずつ、合計六人分の黒い影が冷たい地面に降り立った。最後に一つ、黒い影に比べて小さな白い影が、ひとひらの雪のように降り立った。呼び出しの声がホールに響き渡る。 「ボンゴレ十世、ご到着!」 笑顔で賓客に応対していたユニは、その声に端で見ていても分かる程緊張した。それは他の誰もが同じだった。潮が引くように静まりかえり、人垣が左右に分かれていく。 黒い海が裂けた後を、案内役に先導され、一つの集団が堂々と、また悠然と進んでいく。出席者の誰と比べても若く、また小柄な、東洋系の青年達が中心だった。彼らは頭を下げる年配者達を歯牙にもかけず、臆する事もなく歩みを進めていく。 ユニの前まで案内されると、集団の中から一際小柄で、若く見える青年が歩み出てきた。柔らかな癖毛と、琥珀色の大きな瞳が印象的で、白いスーツがやや堅苦しげに見える。それほどに彼が与える印象は幼く、ユニと2つか3つ程しか違わないように見えた。 ユニはゆったりした動作でドレスの裾を摘み、膝を折って礼をした。 「ようこそいらっしゃいませ。ボンゴレ十世にはご機嫌麗しく存じ上げます」 「こんばんは、ユニちゃん。相変わらずしっかりしてるね」 すました口調で大人びた挨拶をする少女に対して、見た目は少年な青年の挨拶は、ごく普通でくだけたものだった。 「本日はお寒い中ご足労下さり、誠に有難うございます」 「いや、そんなカタイ事は良いからさ。はい、これ」 綱吉は笑って、少女の前に膝をついた。ユニと獄寺が「お召し物が!」と慌てたが、綱吉は全く気に留めない。 「お誕生日おめでとう、お姫様」 綱吉はにっこりと微笑んで、携えていた花束を恭しく差し出した。星形をした白、黄、ピンクの鮮やかな色彩の花々が、色の少ないこの季節に、一層生き生きとして見えた。 「この花、ユニちゃんと同じ名前なんだよ。あまり高価なものじゃないけど、やっぱり女の子には花かなと思って」 ユニは嬉しげに顔を綻ばせ、小声で礼を言って花束を受け取った。 どんな綺麗な宝石や洋服よりも、あなたからのプレゼントが一番嬉しい。 そう伝えたいのに、この肝心な時に、自分の舌は言葉を紡ぐ機能を放棄した。 気に入ってくれた? と笑いながら、綱吉は花束の中からピンクの星を一輪引き抜いた。 そのまま実にさり気なく、誰も不審に思わない程自然な動作で、ユニの髪に花を挿した。黒髪の宇宙に星が咲く。 「うん。やっぱり可愛い」 春めいた花束よりなお鮮やかに、綱吉は笑った。ユニは耳まで真っ赤になり、気取った返事を返すどころではなくなってしまった。ただ、花束を抱きしめる事しかできない。 照れ臭さと恥ずかしさ、嬉しさで顔を伏せる少女を見る大人達の目は温かく、さっさと立ち上がって、一仕事終えた顔で伸びをする上司を見る守護者達の目は、どうしようもなく生温かった。 仕方がない。昔から言うではないか。 古今東西言う事は─── |
神様が降りてきた為に書いたユニ(→)ツナです。
捏造全開ですが、やっぱユニ姫は可愛いなあv